シークヮーサーの町に広がる里山の風景

シークヮーサーの町に広がる里山の風景

 名護市勝山は、嘉津宇岳のふもとに広がる集落です。集落の入口では、大きな「シークヮーサーの里宣言の碑」がお出迎え。ご存知の方も多いと思いますが、勝山はシークヮーサー栽培が盛んな地域として有名です。かつては山の急斜面のほとんどにシークヮーサーが植えられていたそうですが、山道を登ると今もシークヮーサーの木がたくさんあり、おいしそうな黄色い実を付けていました。1月下旬から2月初旬にかけては、ちょうど寒緋桜が見ごろ。桜のピンク色とシークヮーサーの黄色が山の緑の中に溶け込んでいて、その向こうには広い海の青が広がっています。

 さらに上を目指していくと、嘉津宇岳の登山口に辿り着きました。嘉津宇岳は本島内で6番目に高い山で、標高452m。嘉津宇岳・安和岳・八重岳は、中世代の本部層中の石灰岩からなる非常に珍しい地形で、本島ではこの地域だけに自生する植物や本島の固有種もあり、さらにカラスバト、コノハチョウなどの国・県指定天然記念物の生息地になっていて、県自然環境保全地域に指定されています。山頂では360度の大パノラマが広がって北部の海岸の連なりが見渡せ、円すい形の三角山や安和岳など、美しい山々が目の前に並んでいます。勝山は、この豊かな自然に囲まれた集落なんですね。

 山からの眺めを堪能したので、ふもとに下りてみましょう。集落内はとても静かで、澄んだ空気が心地よく、思わず深呼吸してしまいます。里山の緑の間にセメント瓦屋根の家屋が建ち、古き良き時代を想わせる雰囲気が漂っています。まるで映画のワンシーンのような光景。一軒の家の側にある大きな木が目を引きました。「真栄田小のホルノトキ」と呼ばれているそうで、見上げるほどの大樹。

 美しい山並みと絶景の海を同時に楽しめ、懐かしさを感じさせる勝山には、癒しの時間が流れていました。

今に残る城下町の風情

今に残る城下町の風情

 今帰仁村のシンボルといえば、世界遺産に登録されている「今帰仁城跡」ですよね。その城下町である今泊集落は、昔ながらの風情が残る趣のあるエリアなのだそうです。普段はあまり足を踏み入れる機会がないこの場所をのんびり散策してみました。

 車が行き交う国道505号から集落の中に入ると、一変して静かな住宅街。ふと横の路地に目をやると、真っ白な石が敷き詰められたキレイな通りがありました。これは、「宿道(スクミチ)」といわれる昔の国道です。整備された歴史ある道の両脇には、瓦屋根の家や、現代風のおしゃれな外観の家が並んでいます。道端に「ゆんたく」と書かれたベンチがありました。きっと近所の人が集まって、井戸端会議をする場所なんでしょうね。住宅街の何気ない細道が昔の大切な幹線道路である宿道だなんて、ちょっと驚きです。

 今泊のメインストリートは、今泊公民館が建つ「大道(ウフミチ)」。通りにはフクギ並木や石垣が続いています。公民館前に立つひと際大きな木は、天然記念物「今泊のコバテイシ」。樹高約18m、胸高周囲4.5m、推定樹齢300~400年で、以前はこの木の下で豊年踊りや競馬が行われていたそうです。コバテイシには夏から秋にかけて甘酸っぱい実がなり、特に台風の後にはたくさんの実が落ちるので、子どもたちは早起きして実を拾ったそうですよ。コバテイシの大きな幹によじ登って木登りを楽しんだり、横に伸びた枝を伝ってスリルを味わったりして、かっこうの遊び場所だったようです。目を閉じると、当時の子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきそう…。

 大道からさらに奥へ進んでみましょう。集落を抜けると、目の前に真っ白な砂浜と青い海が広がりました。「シルバマ」と呼ばれる今泊のビーチです。集落との間には、防風・防潮林が連なっています。ここでもうちょっと波の音を聞きながら休んでいきますね。

名工の技に目を奪われる

名工の技に目を奪われる

 沖縄を代表する伝統工芸・やちむん(焼物)の里として有名な読谷村。かつて「喜納焼」と呼ばれる窯場があったそうですが、首里王府の命により、那覇の壺屋に各地の陶工が集められることになり、1682年以降に途絶えてしまったそうです。ところが、のちの人間国宝・金城次郎さんが壺屋から読谷村に移住。1980年には、軍用地跡地を利用した「やちむんの里」に4人の陶工が共同登り窯を造り、「読谷山焼」を始めました。1992年には、ここで修業を積んだ若手陶工4人が読谷山焼「北窯」として独立し、現在は14の工房があります。また村内には60近くの窯元が集まってきていて、新たなやちむんの産地として、再び活気を取り戻しているそうですよ。

 「やちむんの里」の広々とした敷地内に足を踏み入れると、まるで琉球王朝時代の職人の里を訪れたような雰囲気です。まず目を引くのは、大きな登り窯。斜面に沿って焼き窯が連なっていて、一番下にある焚き口で燃やした炎の熱が内部を登りながら上の窯に達する造りになっていて、一度に多くの作品を焼くことができるそうです。登り窯に火を入れるのは年に数回だそうで、交代で火を見張り続け、4日間火を絶やさずに焼き上げるそうですよ。登り窯の中をちょっと覗いてみると、中が階段のように段々になっているのが見えました。この場所で、伝統の技を生かした作品が生まれているのですね。

 工房に勝手に入るのは厳禁ですが、邪魔をしないように外からその仕事ぶりを見学するのはOK。伝統の技を間近で見られるのがうれしいです。各窯元内のショップのほか、読谷山窯と北窯には売店があります。陶工によって作品に特徴があるので、その違いを楽しむのもいいですね。普段使いできるやちむんもたくさんあるので、お土産にひとつ買ってみようかな。

 「やちむんの里」の入口近くには、現代の名工・稲嶺盛吉さんの工房で「宙吹ガラス工房」もあります。独自の造形美と色が特徴で、力強いパワーを感じさせる稲嶺さんの作品は県内外だけでなく、海外でも注目されています。やちむんと琉球ガラス、沖縄の伝統工芸に触れられる「やちむんの里」で、名工たちの技を堪能しました。

時が止まったフクギ並木の集落

時が止まったフクギ並木の集落

 沖縄の昔ながらの風景をじっくりと体感できる備瀬のフクギ並木。観光客も多く訪れる人気スポットなので、みなさんも一度は訪れたことがありますよね。碁盤の目のように整備された備瀬集落には、家を取り囲むように植えられた約2万本ものフクギが連なり、備瀬崎まで約1kmの並木道になっています。かつての沖縄の集落の様子とゆったりとした時間の流れを感じられる空間で、差し込む木漏れ日の暖かさを肌で感じたり、風に揺れる葉の音に耳を澄ませがら、ゆっくりとした時間の流れを満喫するのが備瀬イチオシの楽しみ方ですね。順路に沿ってのんびり散策するのもおすすめですが、レンタサイクルを使ったり、水牛馬車に揺られながら回るのもありですよ。

 フクギは、幹が真っ直ぐに伸びて枝葉が密生し、葉が厚く燃えにくいため、防火や防風にぴったりな樹木として植えられたそうです。備瀬のフクギの中で最も古いものは推定樹齢300年。当時の王府は、集落や国都の造形、山林の管理に、国策として風水を取り入れたといわれているそうですよ。琉球王朝時代から、国を挙げての町づくりが進んでいたんですね。

 フクギ並木の中には、他にも見どころもいっぱいです。大きなガジュマルの根元にある「軸石」は、この石を基準にして現在の区画割りが行われと伝わっているそう。駐車場の横にある樹齢350年の「コバテイシ(フバルシ)」の貫録ある姿も見もの。

 フクギ並木を抜けた先に広がるのは、天然ビーチの「備瀬ビーチ」。干潮時には潮だまりができるので、海辺の生きもの観察もできて、ファミリーにも人気のスポットです。備瀬崎の先に浮かぶ小島は「ミーウガン」と呼ばれ、島全体が聖域になっているそうですよ。干潮時には歩いて渡れるそうですが、潮の満ち引きには十分注意してくださいね。海岸沿いには、ボウズサンゴを積んだ珍しい「砂岩(ボウズ)石垣」が連なっているので、こちらもお見逃しなく。

 フクギ並木から少し足を伸ばすと、神が降り立ったといわれる聖域「ワルミ」があります。向かい合う約15mの絶壁の隙間から、神秘的な海が眺望できますよ。備瀬集落は、昔ながらの趣が残るだけでなく、絶景スポットが点在する癒しの場所ですね。

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