地域の景観に想いを馳せる

歩いてみると色々、気づいたり、知ったり、感じたりできるんですよ。
大きな木や、大きなお墓、季節の変化と花の色、いつの間にか無くなってしまった商店や、笑い声。
車中心の生活の中で見落としてしまうような小さなことが、歩く速度ではしっかりと目に入り、心に留まるんです。

山巓毛(さんてぃんもう)にのぼってみる景色からは、大小の糸満の歴史が見えてくるんです。琉球戦国時代の南山王だった他魯毎(タルミイ)の墓、戦前は軒を連ねていた赤瓦の屋根、糸満ロータリーを行き交う人や車。
すぐ隣には、戦争のとき対象物になるからって引き倒された碑があったり、たくさんの弾痕が沖縄戦の恐ろしさを伝えているんです。

私は、「風景は、ふるさとや土地への思い」だと思っています。
例えば、芸能をみせるとき、衣装を着るでしょ。踊りも大事だけと、衣装も同じく見る人を楽しませるという思いやり、そしてそれは表現の一部。
観光にも通じているんだけど、そこに暮らす人たち、そこを偶然通る人たちにとっても目に入る景色はきれいが良いにきまってるでしょ。だからその土地が好きなら、その土地の歴史に敬意を払わないといけないし、守っていかないといけない。

私は糸満生まれで糸満が好き。糸満への思いは、おもてなしの思いだし、未来の子供たちにもこの糸満の風景をつなげたいと思っているの。
だから、自分が知っていることなら、歴史でも方言でも何でも教えてあげる、これが私のモットー。

糸満まち歩きガイド 大谷高子