名工の技に目を奪われる

沖縄を代表する伝統工芸・やちむん(焼物)の里として有名な読谷村。かつて「喜納焼」と呼ばれる窯場があったそうですが、首里王府の命により、那覇の壺屋に各地の陶工が集められることになり、1682年以降に途絶えてしまったそうです。ところが、のちの人間国宝・金城次郎さんが壺屋から読谷村に移住。1980年には、軍用地跡地を利用した「やちむんの里」に4人の陶工が共同登り窯を造り、「読谷山焼」を始めました。1992年には、ここで修業を積んだ若手陶工4人が読谷山焼「北窯」として独立し、現在は14の工房があります。また村内には60近くの窯元が集まってきていて、新たなやちむんの産地として、再び活気を取り戻しているそうですよ。

「やちむんの里」の広々とした敷地内に足を踏み入れると、まるで琉球王朝時代の職人の里を訪れたような雰囲気です。まず目を引くのは、大きな登り窯。斜面に沿って焼き窯が連なっていて、一番下にある焚き口で燃やした炎の熱が内部を登りながら上の窯に達する造りになっていて、一度に多くの作品を焼くことができるそうです。登り窯に火を入れるのは年に数回だそうで、交代で火を見張り続け、4日間火を絶やさずに焼き上げるそうですよ。登り窯の中をちょっと覗いてみると、中が階段のように段々になっているのが見えました。この場所で、伝統の技を生かした作品が生まれているのですね。

工房に勝手に入るのは厳禁ですが、邪魔をしないように外からその仕事ぶりを見学するのはOK。伝統の技を間近で見られるのがうれしいです。各窯元内のショップのほか、読谷山窯と北窯には売店があります。陶工によって作品に特徴があるので、その違いを楽しむのもいいですね。普段使いできるやちむんもたくさんあるので、お土産にひとつ買ってみようかな。

「やちむんの里」の入口近くには、現代の名工・稲嶺盛吉さんの工房で「宙吹ガラス工房」もあります。独自の造形美と色が特徴で、力強いパワーを感じさせる稲嶺さんの作品は県内外だけでなく、海外でも注目されています。やちむんと琉球ガラス、沖縄の伝統工芸に触れられる「やちむんの里」で、名工たちの技を堪能しました。