”美ら島沖縄”風景づくりについて

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”美ら島沖縄”風景づくり

「風景」とは、地域の「顔」

風景とは人々の日常の活動範囲で視覚等を通して主観的にとらえる印象に加え、それぞれの地域における人々の暮らしや歴史文化的背景、また自然環境等を含めた地域の人々の生き様を総合的に表現するものとしてとらえたいものです。

まず、この風景という文字の持つそのものの意味、成り立ちについて考えることにします。
「風」とは元来方位の神様の下にいる、地域の特徴、固有の文化等を他の地域に伝える神であることから、「地域の趣や雰囲気」を表すものと考えられます。

また、「景」とは 柱の影で時間や季節を計ることであり、自然環境や生活環境の中での人々の「活動のあり様」、つまり「暮らし方の指針」を示すものです。

このことから「風景」とは、単なる景観、景色にとどまらず、日々変化する自然環境、生活スタイル(暮らし方)と調和のとれた、その地域の特性や趣を示すものであり、また弛まぬ努力により作り上げられる地域固有の生活の記憶であり、そこに住む人々の「アイデンティティ」つまり地域の「顔」と考えられます。

「沖縄らしさ」とは

沖縄は亜熱帯・海洋性気候の「自然環境面」や、琉球王朝以来、東アジア諸国との交易交流から形づくられた「歴史的・伝統的イメージ」など全国でも際立った地域特性を有しています。

沖縄における現実の風景は、このような沖縄の地域特性や地域イメージを基本としつつ、人々の生活・経済活動により、日々「新しい風景」に作りかえられています。

これまで時間をかけて「自然と人間の活動」が相まってつくり上げられてきた、地域における生活の姿そのものが「沖縄らしさ」であり、また今後我々が生活を営む中で努力してつくり上げるべきものです。

つまり「沖縄らしさ」とは、沖縄の各地域でつくり上げられる「生活の趣」を尊重し「沖縄風」を目指す過程で、実現されるものとなります。

眩しい太陽の光と、その光が際だたせる昼の色彩や郊外の満点の星空が照らす夜の色彩、そして「やんばる風」「宮古風」「石垣風」等、各地域の特性を持った風の集積が「沖縄風」の要素となります。

「現代の沖縄風」を求める

地域における構造物は、新たな風景を形づくる重要な要素です。特に構造物の形と外観の素材と色合いは、風景に大きく影響を与えます。構造物の素材や色合いは、本来、その地域で入手される資源からつくられてきました。つまり、各地域においては、そこで採れる鉱物や植物により建材や塗料を使用したことによる統一性のある風景がつくられてきました。

しかし、各地域が、急速な近代化の中で、効率的画一的に整備が進められることによって、地域の「らしさ」が失われつつあります。

「沖縄らしさ」を示す風景を取り戻すには、住民等の関係者が協力協働して、地域の持つべき共通のイメージの下に、各地域における「風」を実現する継続的な努力をすることが求められます。

共通のイメージを形成していくには住民、観光客等の幅広い視点から総合的に検討が必要です。風景は時々刻々変化するため、昼だけでなく夜間も含めた二十四時間全体を視野に入れる必要があります。また、地域ごとに、建造物の形、デザイン、色合い等で統一的なイメージを持つことが求められます。(例えば、色合いが違っても共通のイメージをもって、色調、彩度、明度等を統一させることも有効な手段となります。)

「沖縄らしさ」を示す風景を取り戻すために、地域で持つべき共通のイメージは、過去の伝統的沖縄風を超えた、新しい沖縄風であり、今後我々が目指すべき沖縄風であり、その時点における沖縄風であることから、「現代の沖縄風」と定義したいと思います。

この「イメージ」を地域ごとに検討する中で、その共通認識の下につくり上げられる新しい沖縄らしさが新たな沖縄風としての「現代の沖縄風」となります。

「風」から「風格」へ

「風景づくり」には、そこに住む人々がその地域固有の自然環境や文化的な特性を自ら確認し、それを活かす弛まぬ努力が不可欠です。また、住民のみならず、関係する行政機関やそこで経済活動を行う人々、その地域以外の人々との協働作業が求められます。

21世紀の沖縄において、各地域の「風」がその地域に根付き、「風格」となるまでの不断の努力・協働を実践し、「現代の沖縄風」を実現していくことが、”美ら島沖縄”風景づくりに当たっての基本的な理念となります。

誰が景観を守り育てるのか

優れた風景を次世代に引き継ぐためには、住民、NPO、事業者(企業)、市町村、県、国のそれぞれが意識を持ち、一体となって活動の輪を広げていく事で「住んでよし、訪れてよし」の”美ら島沖縄”を実現することができます。

図:良好な景観形成を行う上での責務

住民・NPOの役割 ~住民が主役~

魅力ある景観づくりにおいて、住民自らが主役と認識し、地域の景観に関心を持ち、どのような景観にしていくのかを考え、日常生活の中で、住民・NPOが進んで地域の誇れる景観を保全し、地域が行う活動や、行政の施策や事業に積極的に参加、協力していくものとします。

事業者の役割 ~景観に配慮した経済活動~

事業者は、自らの行為が地域の景観に影響を大きく与えるものであることを認識し、その事業活動において地域の景観づくりに努め、地域の一員としてルールに従い、共存共栄を図るものとします。

市町村の役割 ~景観行政団体として~

景観行政を担う中心主体は、地域と密接な関わりを持つ市町村といえます。市町村は、このことを十分認識し、地域の景観特性や課題について住民と胸中の認識を醸成しながら、地域にあった細やかな景観づくりのために、景観行政団体となって協働による景観まちづくりを主体的に実践、推進していくものとします。

県の役割

県は広域的な行政主体として、県民の意識・関心を高め景観形成のボトムアップを図りながら、県全体の景観形成の方向性を示し誘導しつつ、市町村や国と連携を行い総合的な支援をするものとします。

風景づくりの取り組みの経緯

沖縄のまちづくりにおいては、戦後の急速な都市化の進展の中で、経済性や効率性、機能性が重視された結果、美しさへの配慮に欠けたことは否めません。

しかし、近年、沖縄らしく美しい風景づくりへの機運が高まったことから、国、県、市町村において、以下のような取組がなされてきております。

平成6年10月

「沖縄県景観形成条例」の制定

「地域の特性を生かした優れた景観を守り育て、又はつくり、もって快適で魅力あふれるふるさと沖縄の創生に寄与すること」を目的に、「沖縄県景観形成条例」が制定されました。

条例では、県、市町村、事業者等が一丸となって景観形成に取り組むことを目指していますが、当時は、景観形成に対する県民の理解も十分とは言えず、市町村の取組もこれからという状況でした。

平成16年6月

「景観法」の制定

平成15年7月に策定された「美しい国づくり政策大綱」を背景に、国全体として景観形成に取り組むことを目的に「景観法」が制定されました。

景観法では、原則市町村が景観行政団体として地域の「景観計画」を策定し、地域の実情に即した景観形成の方針や施策を定めることとなっております。

平成18年1月

石垣市が県内第1号の景観行政団体

景観法の制定をうけ、石垣市が県内で最初の景観行政団体となりました。
その後、浦添市、那覇市など県内市町村が景観行政団体に移行していき、平成24年12月現在では県内21市町村が景観行政団体となっております。

平成19年1月

「”美ら島沖縄” 風景づくりのためのガイドライン」の策定

景観法の制定を背景に、沖縄における景観施策のあり方とガイドラインを示すことを目的に、内閣府沖縄総合事務局は「美ら島沖縄風景づくりのためのガイドライン」を策定いたしました。

平成22年3月

「沖縄21世紀ビジョン」を定める

平成22年に沖縄固有の景観・風土・を重視し、時間とともに価値が高まっていく「価値創造のまちづくり」(景観10年、風景100年、風土1000年)を実現するとしている、県民の参画と協働のもとに概ね20年後の沖縄のあるべき姿を描いた「沖縄21世紀ビジョン」を定めました。

また、平成22年6月に公表された第7回県民選好度調査において、沖縄の魅力を高めるためには「沖縄の歴史・文化を感じる街並み」が必要であると県民の多くが感じていることが明らかになったように、風景づくりの取り組みは、県民一人一人が、”美ら島沖縄” を創り上げ、沖縄の暮らしを豊かにし、住む人が郷土に誇りや愛着を高めていくための取り組みであり、訪れる人が魅力を感じ交流を促す経済活動とも調和した取り組みでもあります。

「沖縄県景観形成ガイドライン」の策定

県では、市町村が景観計画を策定する際、技術的に支援する手引書となる「沖縄県景観形成ガイドライン」を策定しました。

本ガイドラインでは、景観計画の策定だけではなく、他の法制度の活用やソフト面の活動との連携のあり方、これから建物などをつくる設計者や施主にとっても参考になるものとして活用できます。

平成23年1月

「”美ら島沖縄” 風景づくり計画(沖縄県景観形成基本計画)」の策定

県では、平成21年の景観形成条例の改正を行い、平成22年「沖縄21世紀ビジョン」を受け、沖縄県景観形成基本方針に基づき、景観形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる計画「”美ら島沖縄” 風景づくり計画(沖縄県景観形成基本計画)」を策定しました。

平成24年

「沖縄らしい風景づくり推進事業」の実施

復帰40周年を迎え、沖縄県では沖縄振興特別措置法の改正に伴い、「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)」を策定しました。

計画の中では、「沖縄らしい風景づくり」の施策展開が位置づけられ、時間とともに価値が高まる地域づくり「価値創造のまちづくり」をテーマに、今年度から沖縄の特性にふさわしい良好な景観の形成を促進していく「沖縄らしい風景づくり推進事業」に取り組んでいます。

”美ら島沖縄”風景づくりの展開

図:“美ら島沖縄”風景づくりの展開